教員紹介
2025年10月2日
杉本康太講師は、電力会社の発送電分離の効果について実証分析を重ねてきました。アメリカで実施された送電系統の運用を非営利組織に委ねる機能分離と、ドイツで実施された送電部門の資本関係を断ち切る所有分離が、再エネ導入に与える効果の有無を明らかにしました。
日本や欧米は2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという目標を掲げています。この野心的な目標の達成には、化石燃料を用いる火力発電を、再生可能エネルギー(再エネ)による発電に置き換えることが有効となります。日本の電力会社は法的分離という比較的弱い発送電分離を実施したため、再エネの導入を阻害していると捉えられていました。
本研究ではアメリカの発送電分離が再エネの導入を増加させる効果について分析した結果、送電系統の運用を電力会社から非営利組織に移管する機能分離を実施した州の方が、陸上風力発電の導入容量を統計的に有意に増加させていることがわかりました。一方、ドイツで送電会社の所有権を電力会社から完全に分離した地域と送電会社を別会社化しただけの地域(法的分離)を比較すると、再エネの導入量に統計的に有意な差がないことを明らかにしました。これらの分析結果から、再エネの導入を実現する上では、所有分離は必ずしも必須条件ではないものの、既存の電力会社の利害から独立した送電ネットワークの運用の実現が重要であることを示唆しています。