教員紹介

戦前日本の宅地開発事業に対する小作争議の動向を克明に

2022年10月19日

 出口雄大准教授は、共同研究(「千葉大学リーディング研究育成プログラム・未来型公正社会研究」)の一環として、昭和三大台風の一つである室戸台風を事例に、被災地の「復興」を目的とした土地区画整理事業の施行に対する小作争議を中心に分析しました。

 戦前日本の宅地開発事業は、大都市部の周辺農村を中心に展開しました。戦前日本の農村では寄生地主制という形態が支配的であったため、宅地開発事業の過程において小作人の小作地返還という問題が生じざるを得ませんでした。しかしその一方で、宅地開発事業に対する小作人の動向については、充分に研究が蓄積されていない状況にあります。

 本研究では、1934年9月発生の室戸台風で甚大な被害を受けた兵庫県武庫郡大庄村(現在の尼崎市域)を事例に、被災地の「復興」を目的とした大庄土地区画整理事業の施行に対する小作人らの小作争議を中心に分析し、開発主体の大庄村当局と小作人との間で暴力的な衝突を伴うほど対立が深刻化したものの、最終的には公権力の強制性によって大庄土地区画整理事業の着手に至った点を明らかにしました。

本研究成果は、佐藤健太郎・荻山正浩編著『公正の遍歴:近代日本の地域と国家』吉田書店、2022年に収録されました。

『公正の遍歴:近代日本の地域と国家』
『公正の遍歴:近代日本の地域と国家』

書誌情報

出口雄大「旧都市計画法第一三条による土地区画整理事業と地域社会:室戸台風を事例として」佐藤健太郎・荻山正浩編著『公正の遍歴:近代日本の地域と国家』吉田書店、2022年。新しいウィンドウが開きます
ISBN:978-4-910590-05-9


研究者情報
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